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2024/2/4 映画感想文『哀れなるものたち』

『哀れなるものたち』鑑賞。すごく良かった。エマストーンのお芝居がすごい。女性が禁じられてきた・ていることのカタログみたいな映画。

それにしてもマックスのあの落ち着きようはなんなんだ!?と思って原作小説を買いに行ったが品切れだった。デートに最適な映画だと思う(試金石的な意味で)。

ベラの態度は一貫していて、侮辱されても、相手が受け取らなければ侮辱は成立しない、ということ。

ベラが世界を知ろうとする、実験するという目的を見失わないのが良かった。特に娼館の主人と話した後の仕事の仕方、自分の職掌の範囲内でできることをするのがとても面白い。

彼女のセックスに対する態度は身体が自分のものじゃないという感覚によるのかもしれない。

作中で正気を失う男二人に共通しているのは『所有欲』であり、つまりは自分の外に自分の価値を求めることのように思った。

特にダンカンのいう『遊ぶ』には『相手は本気になるが、自分はならない』という支配-被支配の関係性が含まれていて、そのことに気付かされた時プライドが砕かれる。お前気付いとらんかったんかい、という感じである。砕かれた結果、相手に愛されるよう努力するのではなく自分と同じように破壊しようとする。

一方、もう一人はベラの脳が胎児のものであることを知らされてもそのことに頓着しない。このことが彼が彼女をどう捉えているかを示している。ラストシーンはその意味で因果応報的。

ベラが母であると同時に娘である、ということがかなり含蓄ある感じなんだけど深すぎて(そういうもんかな)くらいの受け止めである。

この映画には中高年の女性が重要な役割で三人出てくる。メインの男性は四人だがこちらもみな中高年(マックスは若いかな?)。最近洋画洋ドラを見ててこの辺が邦画が大きく水を開けられているなと思う点。日本でこういう映画を撮ろうと思うと(まず撮れないと思うが)、平均年齢が20歳は若くなるんじゃないか。若くなく典型的美形でなくモデル体型でもない、そういう登場人物がどのくらい出てくるかという話。

それにしても欧米の文学に通底するキリスト教的価値観、これは一回ちゃんと勉強しないとなと思う。

 

追記)

女性のセックスの最大リスクである妊娠について、全く何も触れられてなかったんだけど、あれは多分ベラが生まれた時に妊娠に関する機能は失われたということなんだろう。初潮も生理も妊娠もない。だからゴッドはベラをあんなに落ち着いて見送ったんだろうなと思う。

明示されていないがゴッドが父から去勢されたと発言しているので多分そうなんだろう(重ね合わせて暗示している)。